おとなの寺子屋主催!「親子マインドフルネス」〜実践編〜

マインドフルネス

5月に第1回目として、子育て中に感じるイライラや自己嫌悪について、その仕組みとマインドフルの活用法の講座が開催されました。2回目となる今回は、その学習を踏まえて、親子での実践編です。

親子マインドフルネスは、「うまく」いかないのがあたり前!?

開始前に配られたプリントには、こんなことが書かれていました。

マインドフルネスは、思考やジャッジメントに引きずられないで、ありのままの“今ここ”を100%体験する実践です。

日常生活で、家族で楽しめるものもたくさんあります。子どもたちは“今ここ”の達人です。
一緒にいるからこそ、大人の眼鏡をはずして、この世界の不思議さをまず楽しみましょう!

今回集まったのは、3組の親子。こどもの参加者はなんと全員男の子。元気いっぱいです。

開始まで、おしゃべりしたり、会場内を元気よく動き回ったりしていました。
始まりは、皆で車座になり、「しずかちゃん」(綺麗な音がなる鐘)が鳴るところから。

「しずかちゃん」は1回目でも活用されたツールですが、音を鳴らすとみんなが静かになるから「しずかちゃん」。「しずかちゃん」の音色に耳を澄ます間は自分の呼吸に戻って、目の前のこと(見えるもの、聞こえるもの)に集中することができます。

音が減衰して静けさが場を包み込むにつれ、神経が研ぎ澄まされ、これから始まることへの心の準備が整うのを感じられました。
ついさっきまで動いていた子ども達も、いつのまにか静かになっています。

まずは、前回の講師である島田啓介さんから、大人のマインドフルネスと親子のマインドフルネスのセミナーの違いと、そのテーマについての話から。

「大人のマインドフルネスは、自分の意思で参加してきます。一生懸命学ぼうとしているので、セミナーは「うまく」いくのが当たり前です。

一方、子どもの場合は、大抵親に連れてこられての参加です。「うまく」いくことは当たり前でなく、そうでないのが面白く、たいへんなことでもあります。

子どもが相手だと「うまく」いかないから、大人が試されます。

だからまず、1回目に大人だけ集まって、マインドフルネスに関しての実践と知識を習得しました。実践と知識を得た大人であっても、実際に子どもの相手の場合、「うまく」いきません。
ではそういう時に大人はどうしたらいいか?

そこが、親子マインドフルネスの大きなテーマです。

これは、日常生活も同じこと。大人が子どもに対して、うまくいかせようと思っても、うまくいかないのが現実です。

今回のセミナーでは、日常と同じようなことを親子でしてみて、実際に起こることをマインドフルネスに受け止め、ありのままの“今ここ”を体験します。」

島田さんのお話は、まさにマインドフルネスの言葉をわかりやすく言い換えたもの。

なるほど、これから“今ここ”の達人の子どもたちと、“今ここ”を100%楽しむですね。
さて、これからどんな「うまく」いかないことが起こるのでしょうか?

その時、対峙する大人は、大人の眼鏡をはずしてそれを受け入れ、その時起こる不思議さや豊かさをどう楽しんだらいいでしょうか?

ポーズを決めて、家族いっしょに自己紹介

テーマのお話のあとは、今回のファシリテーター・みゆさんから、これから行う自己紹介についての説明がありました。

自己紹介は家族ごとに行うとのこと。名前の紹介のほかに、家族でポーズを作ってもらいたいとの要望がだされました。

そこで、参加者の男の子から「いやだ」の声。おっと、早速、「うまく」いかない場面に遭遇です。

みゆさん、その「いやだ」を動じることなく受け止め、「じゃあ、いやだと言った家族からいこうかな?」と、さらりとかわし、家族で相談することを促しました。

「いやだ」と言った子も特段いやな素振りを見せることなく、家族とちゃんと話しあって、ポーズまでばっちり決めて自己紹介しました。

発せられた「いやだ」は、受け入れられて、不思議と進行の流れにのって、緩やかに流れていったように感じました。

自己紹介の中では、前回のセミナーでの宿題だった、こどもの名前の由来についても発表されました。

親は、思いを込めたこどもの名前について語ります。こどもは、自分の名前がどういう由来で、どういう思いでつけられたかを、なんだか恥ずかしげに、そして少し誇らしげに聞いています。心が通い合う、温かさを感じました。

ゲームを通して、“今ここ”を楽しむ

次は、「止まるゲーム」

1枚のカードを引いて、カードの絵に描かれた人物や動物になりきるゲームです。

しずかちゃんの鐘の合図で、ジェスチャースタート。身体全体を動かして、なりきって表現します。再び、しずかちゃんの鐘がなったら、動きを止めて、呼吸を整えます。

カードを引くと、ゴリラの絵。
ゴリラの動きってどんなだろう?と想像しながら、それぞれゴリラになりきり、ジェスチャーをします。

しずかちゃんが鳴ると、皆止まります。止まると、息が切れているのに気がつきます。
呼吸が乱れ、心臓の動きが速いのが感じられます。動いている時には感じなかったのですが、止まってみると、それまでの動きが鮮明に感じられます

「止まる」と「気づく」ことができるのだと、速い鼓動を聴きながら思いました。

このゲームで、大人は想像力と身体を駆使しながら、一生懸命に取り組む様子が印象的でしたが、こどもは伸び伸びと自由です。

カードを引く時も、しずかちゃんを鳴らす時も、大人が「こうあるだろう」という予想を簡単に超えていきます。しずかちゃんを鳴らすのもこども流だから、響く音が鳴らなかったり、音が鳴っている間、止めてしまったり。

見ている大人は、こうした方がいいという改善点を提示するだけで、決して否定することはありません。ゲームを進めるのも、大人の思うようにはいきません。

話の途中に、子どもの率直な疑問や意見が次々と飛び出してきます。集中力がきれると、ゲームの途中であっても、会場を走り回ったり。感想を述べあっている間も、聞いたり聞かなかったり、自由です。

大人の眼鏡でこの場を見るなら、「ちゃんと座りなさい」、「人の意見は聞こうね」と、言ってしまいそうな場面ですが、ここをマインドフルに受け止めると…

こどもたちは、“今ここ”をそれぞれの興味の範囲やペースで楽しんでいるのです。
だから、大人も「大人の眼鏡」を外して、それを許容して、一緒に楽しめばいいのです。

そう考えると、急に「○○しなければならない」という決まり事から解放されて、気楽になんでも楽しもうという気持ちになってきます。

思考やジャッジメントを止める、まではいきませんが、緩めることで、気持ちの持ちようは変わるのだと感じた瞬間でした。

「呼吸」に気づく

次は、ゲームの中で感じた「呼吸」に気づくことを深めます。

息をしているってどういうこと? どうしたら確かめられる?息をしているかかどうか、親子で確かめてみます。お互いに脈を探ってみたり試みますが、子どもたちはイマイチぴんときていないようです。

子どもたちが息をしているのを探っている間にも、「なぜ息をするの? いつから息をしているの?」と島田さんは問いかけます。

それに子どもたちが答え、さらに派生して問いが繰り返されます。

クエスチョンの数が増大していくのと同時に、だんだんと子どもたちは賑やかに、より自由になっていきます。 思い思いに発言する子、椅子で遊ぶ子、歩き回る子。「うまく」まとめるのは難しい状況です。

そこで、しずかちゃん

しずかちゃんの音色で、それまでの賑やかさが嘘のように静かになりました。
しずかちゃんが鳴る→動きを止めて静かにする、ということは、どうやら子どもたちに刷り込まれたようです。

一旦リセットしたあと、「呼吸」を感じることを、別の手段に切り替えて試みます。子どもたちには、会場を思い切り走り回ってもらいます。走ると心臓が速くなり、さっきよりも息がきれて、呼吸の乱れが大きく感じられます。

走って、ぜいぜいと呼吸している子どもたちに、「なぜ心臓は速くなるの? 速さは自分でコントロールできる?」再び次々と問いがなされます。

しずかちゃん

心臓の音、呼吸。それを感じる時間。少しは、呼吸について感じることができたでしょうか?

マインドフルに「食べる」

ここで、おやつタイム

おやつの準備は子どもが担当します。ここで、流れが変わりました。おやつと聞いて、子どもたちが急にイキイキとしだしたのです。

おやつを用意する手順を話し合い、自ら動いて行動し始めました。テーブルクロスを敷き、花を飾り、飲み物やお菓子を並べます。

全員がなんらかの仕事を担い、お茶の準備が整いました。

マインドフルに食べる試みです。マインドフルに食べるとは・・・・

食事やおやつの時に、丁寧に食べるものを用意します。家族で食卓についたら、まず食べ物をよく見つめます。

「この食べ物がどのように育って、ここまで来たのか」を考えると、自然や生き物や多くの働きがそこに含まれていることに気づきます。

お互いの目をみて、一緒に食べられることを喜び、微笑み合い…3分でも、5分でも、ただ食べることを楽しむのです。

砂時計を置いて時間が見えるようにすると、落ち着いて食べられます。

全員が席に着き、「子どものための食前の祈り」が子どもたち全員で読み上げられました。その後5分間、静かに食べたり、飲んだりします。

その間、決して話したりしてはいけません。ただ目の前の「食べること」「飲むこと」に集中するのです。

5分後、感想を述べ合います。

「食べることのありがたさを感じた」
「ひとりだけの空間で、もっとみんなとおしゃべりしたいと思った」
「時間が長く感じたり、速く感じたりした」
「普段の食事は、男の子が4人いるので、静かに食べるということが堪能できた」
「普段より味が濃く感じた」
「ゆっくり食べると、色々なことが見える」

感覚を研ぎ澄ましたからこそ、感じられたことなのでしょう。

マインドフルネスを食事やおやつの場で実践することで、静かな時間や場所を共有することができそうです。

5分でも、普段と違う環境を作ってみたり、作業手順や作業する人を変えてみたりすることで、心を開くシチュエーション作りができます。

週末のひと時に、マインドフルネスのお茶の時間を作ってみると、何か変わるかもしれませんね。

カードでメッセージを伝える

最後のワークは、カード作り

親から子どもへ、子どもから親へ、感謝や思いを伝えるメッセージカードを作ります。
相手がその気持ちになってくれるような文や絵を添えて。

20分間、鉛筆を走らせる音や紙を切る音が聞こえてきます。この日の中で、一番長く静かな時間が流れていました。

相手を思いながらカードを作る、心の動きがただ作業に集中することに向かわせていたのかもしれません。

出来上がったカードは、家族ごとで渡し合います。親は、子どもの目をまっすぐに見つめて、ゆっくりとじっくりとカードを読み上げます。声のトーンが自ずと優しくなります。

それを聞くこどもは、なんだか恥ずかしそうでもあり、嬉しそうでもあります。子どもは、親へのカードを読み上げることで、カードに書かれた自分の心をより感じているように感じました。

こどもの世界をいっしょに楽しむ

振り返りタイム

大人の世界はうまくやることでできているのに、対して子どもの世界はそうではありません。逆に、うまくやることで、子どもの可能性を潰してしまうかもしれません。

子どもは、目の前のこと、つまり“今ここ”に集中して生きています

このセミナーも、前半は自由勝手に過ごしていた子どもたち。

彼らは彼らなりに“今ここ”を楽しんでいるのです。大人からすると、「うまく」いっているとは言い難いかもしれません。

その空気が変わったのが、お茶のセッティングから。子どもたちが自ら考え、行動することで、それまでの空気を変えました。大人の世界と子どもの世界がリンクした瞬間です。

大人と子どもが同じ時間や場を共有して、わくわくしたり楽しめるためには、なにが必要なのでしょうか?

冒頭に記したマインドフルネスの考え方を取り入れることや、子どもに大人の常識を強要するのではなく、大人の方が自分のセッティングを変えてみる、それが大事なのだと感じました。

子どもは、“今この瞬間”を味わう達人です。

子どもたちに倣って、一緒に歩いたり、動いたり、景色を見るのを楽しむ。大人が子どもに歩調を合わせることの大事さを、改めて実感しました。

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