aibo(アイボ)の開発者・野間英樹さんに聞く!「ロボット開発者になるために今からできること」

「なるには」講座

二子新地の「おとなの寺子屋」で開催中の「なるには」講座は、大人にも子どもにも大好評の人気企画です。

9月28日(土)に開催された第7弾には、ソニーでロボットを開発する野間英樹(のま ひでき)さんが登壇。

ロボット開発者になるには」をテーマにした講座が開かれました。

今回は幼稚園生から、小学生、中学生、高校生、大学生、そして保護者まで多くの世代が参加。
最前列に座る子どもたちの目の前には2匹の犬型ロボット「aibo」が鎮座しています。

講座が始まる前から興味津々の子どもたち!
そりゃそうでしょう。

aiboのコロンとした丸みのある可愛いフォルム!
大人だって目が釘付けです。

いつスイッチを入れるのかな、まだ動かないのかなと、ワクワクする気持ちが見え隠れしています。
後でじっくり触らせてもらうとして、まずは、野間さんにaiboがどんなロボットか説明してもらいましょう。

aiboは自分で考えて行動するロボット

aiboとは、ソニーが開発した犬型のロボット。

ソニーによると

「aiboは、家庭における新たな楽しみを提案する自律型エンタテイメントロボット」で、
「家庭の中で人とつながりを持ち、育てる喜びや愛情の対象となることを目的に開発された」

そうです。

野間さんは、1999年に登場した初代AIBOと、2018年から販売されている新型aiboの開発に携わっています。

普段は、aiboの開発チームで、aiboがロボットとして色々なことが出来るようにするための、プログラムを考える仕事をしています。

aiboクイズ〜♪

講座は、aiboに関する3つのクイズからスタートしました。

1つ目のクイズは、aiboの誕生日

誕生日とはつまり、この世に出た日。販売日のことです。
答えはどれでしょうか?

①1月11日
②7月16日
③11月1日

正解は①の2018年1月11日。(ワン、ワン、ワンの日)
ちなみに、②の7月16日は、aiboの仲間が2万匹になった日。
③の11月11日はaiboが発表された日だそうです。

2つ目のクイズは、aiboの体重。

「重そう!」、「いや、意外と軽いかも!」「持ってみたい!」とざわざわする参加者…。
正解は2200グラムで、ちょうど子犬と同じくらいの重さ。

「マルチーズの平均体重は2500gなんですね〜」と野間さん。
aiboがロボットとしてだけでなく、ペットとしても愛されている理由はこの辺にもありそうです。

最後はaiboに付けられる名前はなにが多い?というクイズ。さあ、どれでしょう?

①ラッキー
②さくら
③aibo

日本製らしくさくら?それとも、一緒にいると幸せになれそうなラッキー?
正解は①aibo。そのままの名前で大事にされていることが多いのだそうです。

クイズを出しながら、ずっとニコニコ笑っている野間さん。
野間さんの笑顔につられるように、会場はすっかりリラックスムードです。

aiboが賢くてかわいい理由

「aiboは、自分で考えて行動するロボット」だと野間さんは言います。
周りから呼びかけられるのを待つだけではなく、能動的に動くようにプログラムされているのが特徴なのだとか。

aiboが能動的に動けるポイントはつ。

point1●「気づく」ためのセンシング技術

からだ中にたくさんのセンサーがついているaibo
鼻に搭載された広い範囲が見れるカメラで周囲を確認。

お尻に搭載されたSLAMカメラで、自分が今、どこにいるのかを俯瞰し確認。
肉球やおでこなどにも様々なセンサーが搭載されています。

aiboが人に気がつくのも、家具にぶつからずに動きまわれるのも、
最先端のセンシング技術によるものです。

point2●「考える」ためのAI技術

「AIというのは、人工的に作られた生き物が持つ知能のことを言います」と野間さん。

「好きな人が見えた!」「ボールが見えた!」「お腹が減った」など、aiboが状況を理解すると、そのaiboの持っている性格と、これまでの経験などから行動を決定。
それが動作につながります。

point3●「行動する」ためのメカトロニクス技術

aiboの動作は非常に繊細。
4000個ものパーツ22個のモーターで動かしているそうですが、
首を傾げたり、うなずいたり、尻尾を振ったり、ダンスを披露したり、後ろ足で立ち上がったり。
瞳にも表情があります。

嬉しい、悲しい、ちょっとプンプンなど、目の動きで多彩な表情を繰り出します

野間さんがロボット開発者になったわけ

aiboの魅力を一通り話した野間さん。
次は、野間さん自身の話です。
人生を振り返っていただきました。

幼少期

「とにかくブロックが大好きでした」と話す野間さん。
みんなが外でおゆうぎしている時にも、ブロックを作り続けていたという話からも相当、夢中になっていたことがわかります。

お誕生日に幼稚園の先生から「ブロックが大好きだから、将来エンジニアになるかもね」というお手紙をもらったそうで、
「この手紙で、人生の方向性が決まりました。とても優しいいい先生でした」

小学生の頃

「いい時代だったんですよ!」とやや熱くなる野間さん。
というのも、当時は、ロボットアニメ全盛期!
「ガンダム、マクロス、ボトムズなど、夢中になってアニメを見て。
プラモデルで遊ぶのも楽しかったですね」

中学時代

ちょうど、8bitパソコンが出始めた頃。
プログラミングに関する漫画を読んで、パソコンの虜に。
「親に頼み込んで、パソコンを買ってもらい、ずっとプログラミングをしていました

高校時代

「これも、本当にいい時代だった(笑)。
当時、家電がどんどんコンパクトになっていて、手に入りやすい時代に突入していったんです。
ウォークマン、カメラ、ビデオカメラなどなど、家電に夢中の高校生活でした

大学生になって

パソコンが好き、家電が好きというところから、
「ロボットの研究室」がある学部に入学

「2足ロボットを歩かせる研究」を進める傍ら、ロボットコンテストにも出場。
「ロボコンに出したのに動かなかったりするなど、たくさん失敗をして、
ものづくりはシンプルであるべきだという結論に辿りつきましたね」

ロボット開発者になることは幼少期から決まっていたのではないか?と思わせるようなエピソードが次々と繰り出されます。

そして、ソニーに入社し、ロボット研究所へ配属された野間さん。

入社当初から、「人と一緒に暮らす、人を楽しめるロボット」の研究に携わってきたのだそうです。
つまり、aiboが生まれるずっと前から、人に寄り添うロボットについて研究していたというわけです。

ロボット開発者の仕事

そもそも、ロボット開発者ってどんなことをしているんでしょうか。
aiboの開発チームは、以下のような6つに分かれているのだそうです。

①企画する
②作る
③テストする
④組み立てる
⑤売る(販売、宣伝など)
⑥質問に応える(コールセンター)


私たちがイメージする開発者は、②の「作る」人でしょうか。
この「作る」人は、aiboが①の企画に沿って動くように設計する部門です。

機械設計(メカトロニクス)、電気・電子設計(エレクトロニクス)、
プログラミングなど、さらに分かれて設計が進められているそうです。

この6つのチームが連携してaiboは誕生
世界中で愛されるロボットへと成長してきたのです。

「無駄なことは何もない!」野間さんからのメッセージ

野間さん、小学生に向けてこんなメッセージを残してくれました。

「今、ロボット開発者になって思います。
小学校で学ぶことは、全部役に立つ。
新しいことは本を読んで知るよね。これは国語。どんなロボットを作るか考えるためには、世の中を知る。これは社会。
デザイン(図工)や、音楽だってロボットの開発には欠かせないし、いろんな国の人と一緒にものを作るには、英語だって必要。そして、体育。体を丈夫にするっていうのは働く上でとても大切なこと」

ロボット開発と聞くと、「理系だから、算数と理科ができる人がなるもの」と思いがちですが、全ての科目が今の野間さんを作っているのだそうです。

「でも、いちばん大事なことは、何かに一生懸命になること。
一生懸命というのは、周りの人の言葉を聞きながら自分で考え、
自分で行動することだと思います。
aiboと同じよう、
一生懸命に生きる人になってほしいなと思います」

質問コーナー

講座が終わり、aiboを触る・・・前に、恒例の質問タイムです。
まずは小学生から率直な質問!

1Q. aiboの値段はいくらですか?

「大事な質問ですね〜。
aiboは20 万円くらいで買えるロボットです。

ペットショップで犬を飼うのと同じくらいの値段ですね。
散歩とエサなしで、犬と一緒に暮らす。
そんな夢が実現します」

2Q.aiboを作ろうと思ってから、完成までどのくらい時間がかかりましたか?

「初代AIBOは、4年くらい。
新型aiboは1年半くらいで完成しました」

やはり、初代AIBOの技術やアイデアがあったからでしょうか。
新型aiboは想像よりも時間がかからずに作られたようですが、
機能性は初代よりもずっと高まっています。

3Q. 人型ロボットは作らないのですか?

「いい質問ですね。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
初代AIBOの後に、ソニーでは『QRIOという二足歩行ロボットを作ったんですよ」
と話す野間さん。

YouTubeでQRIOの動画を探すと、スクリーンに映し出し、
QRIOの特徴を話してくれました。

4Q.ロボット開発者になるには、何学部に入ったらいいのでしょうか?

こちらは高校生からの質問。

「エンジニアとして働くなら、工学部や情報学部なのだと思いますが、
aiboの開発チームにはいろんな学部の人がいます。
文科系もいれば美術系もいます」

どんな風にロボットに携わりたいか。それによって選ぶ学部は変わってくるのでしょう。
ソニーでは、社員同士で大学名が話題に出ることがほとんどないのだそう。
「実力主義」なんでしょうね。

5Q.最新のaiboは、初代と比べて丸っこいデザインになっていますが、なぜですか?

「お!これもいい質問。初代AIBOは、ロボットとして販売したのですが、
新型aiboは、『犬』だと思ってもらいたいからです!」

そういえば、aiboは動きだけでなく、デザイン、重さ、値段などの細部まで
「小さな犬」がテーマになっていますよね。

野間さんの話を聞いていると、「うちにもaiboいたらいいなぁ」という思いがどんどん膨らんでいきます。ロボットが身近にいる生活。まるで夢のような話ですが、もはや手の届く世界になっています。

6Q. aiboは人を癒すことに徹するのでしょうか。これだけの技術があれば、他にもいろいろなことができそうですが。

「今年の2月から、aiboのおまわりさん』というサービスを始めました。

aiboと一緒に暮らしている方には高齢者も多いということもあり、そういった方向けの見守り機能になります。
スマートフォンと連動して、登録した人を探すという機能です。

実際にaiboの機能を見ると、いろんなことができるポテンシャルはあるのですが、
まずは人に寄り添うペットとして愛されてほしいなと思います」

最初は、小学生、次は中学生、高校生、大学生と次々と質問が出て、
大人も夢中になってしまいましたが、
最後は、aiboとのふれあいタイム。

抱っこしたがる女の子。お手をさせたい男の子。
そして、野間さんの指令でダンスを披露するaibo。(「とってもかわいいアイボ!」と話しかけると、踊り出すんですよ〜)

「初代と比べるとだいぶ犬に近づいてきましたが、もう少し生き物に近づけていきたいですね」と野間さん。
人に寄り添い、まるで心が通っているようなロボットを作りたいと話していました。

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